遠回りしたら見えるものがある

スノーボードやスキー、サーフィンをマニアックに分析したい

スノーボードの谷回り部分を分解してみた

前回、スノーボードのターンに使用する力には、斜面を横方向に進む力斜面を落下する力があることを考えました。

fq12345.hatenablog.com

 

今回は、斜面を横方向に進む力を、どのように使用して谷回りをはじめるかを考えてみます。次のようなことに、心当たりがある方には特に重要ではないかと思います。

 

  • 急斜面や荒れた斜面で、トゥサイドターンがなかなか始まらなくて怖い
  • ヒールサイドのカービングターンをいくら練習してもずれる

 

最初に、説明の曖昧さを少なくするために、以降、写真1の言葉を使用して説明します。ここは結構重要です!!

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写真1 言葉の定義

 

前回の動画2のように、斜滑降して斜面を横方向に進む力を使えば、斜面下方向へ落下する力とのつりありによって、自然に谷回りがはじまります。上半身をねじったり、ジャンプする必要はないということですね。スノーボーダーがすべきことは、重心のノーズ前への移動です。斜滑降中に、重心がノーズ前にあれば、ノーズが斜面を落下する力が大きくなるので谷回りがはじまります。

 

この動作は、「先落とし」や「ノーズドロップ」と言われています。これらを練習したことがある方は多いと思います。しかし、重心をノーズ前に移動させても、なかなかボードが谷回りせず、上半身をねじった経験をお持ちの方は多いと思います。怖いと、山側のエッジを上手く緩めることができません。ビー玉にはエッジがありませんので、スムーズに方向転換しますが、スノーボードにはエッジがあるので、山側のエッジを抜くことも必要です。

 

「先落とし」や「ノーズドロップ」は、完全に停止した状態からはちょっと難しいです。谷回りには、斜滑降して斜面を横方向に進む力が重要ですので、怖いかもしれませんが、少し斜滑降しながら、重心をノーズ前への移動しつつ、山側のエッジを抜く(ボードを斜面にフラットにする)動作を練習する方が実際のターンに役立つと思います。

 

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写真2 谷回り (イメージしやすいように、レールをおいています)
 

谷回りは、斜滑降をしながら、重心をノーズ前に移動しつつ、スノーボードを斜面に対してフラットにできれば、自然にはじまります。

 

スノーボードを斜面に対してフラットにするのも重心移動で行います。単に、ノーズ前に重心を移動させるだけでは、フラットにはなりません。エッジを緩めるために、トゥサイド側、ヒールサイド側への重心移動が必要になります。

 

ここまでの話は、重心移動でボードをフラットにした後、斜滑降の力を使って、ボードが回転し始めるのを「待つ」イメージでした。そのため、急いで方向転換をしたい場合には、都合がよくありません。ターンしたいときに、すぐターンできないのは非常に怖いことですよね。ターンしたいのにできなくなると、なんとかしようと、身体をねじる等、不要な動きをたくさん行ってしまいます。これは疲れますし、膝の靭帯等に悪いです。

 

では、自由にターンを開始するためには、どうすればよいのでしょうか?

ボードに回転力を与えることができれば良いはずです。 

 

動画3 斜滑降だけのターンのイメージ

  

動画4 斜滑降の力を回転力に変えた場合のイメージ

 

動画3、4のアンパンマン箱を、スノーボードと思ってください。動画3では、斜滑降からそのまま谷回りします。動画4では、斜滑降した先で障害物にぶつかることで、アンパンマン箱が回転します。障害物は、アンパンマン箱の進行方向に対して左前にぶつかり、反時計回りの回転力がうまれました。実際のスノーボードでは、障害物にぶつけてターンするわけにはいきません。その代わりに、写真1の前足トゥサイドもしくは前足ヒールサイドの部分に荷重することで、その部分の雪面との摩擦力を高めて、斜滑降の力を回転力に変換することができます。ボードを斜面に対してフラットにして回転しやすい状態で、さらに、前足トゥサイドもしくは前足ヒールサイドの部分に荷重すると、ボードを、回転させることができます。

 

自由にターンを開始するには、斜滑降をしながら、重心をノーズ前に移動しつつ、スノーボードを斜面に対してフラットにして、さらに、前足トゥサイドもしくは前足ヒールサイドに意図的に荷重すればよいはずです

 

ちなみに、谷回りの開始はこれだけで良いはずですが、写真やビデオで身体とボードの両方が傾いた姿に影響されて、身体を傾けることでターンが始まると思ってしまう人は多いと思います。スノーボードを斜面に対してフラットにするためには必要な動きですが、上半身だけ傾けてしまうと、スノーボードのトゥサイド側、ヒールサイド側に大きく重心がずれてしまい、前足トゥサイド、前足ヒールサイドにしっかり荷重できなくなります。内倒と呼ばれる動きですが、自分では倒しているつもりでも、ターンできないという状態になります。トゥサイドでよくおこります。身体を倒して曲がるのではないと思った方がよいでしょう。

 

また、上半身をねじればターンが始まると教えられる場合もありますが、これは厄介です。特に、ヒールサイドターンを練習しても練習しても、ズレてしまうという状態になりますので、ねじって曲がるわけではないと思っておいた方がよいと思います。

 

今回は、谷回りを開始する部分を分解してみました。ただし、これはあくまでターンを開始する部分ですので、カービングターンというわけではありません

 

カービングターンにするためには、後足トゥサイド/ヒールサイドで、回転を止める動きが必要です。これは次回で。