遠回りしたら見えるものがある

スノーボードやスキー、サーフィンをマニアックに分析したい

ヒールターンの謎をやっと解明できた③

これまで、ヒールターンのポイントのうち、アプローチ角付けについて解説してきました。今回は、最終回として荷重について解説します。

 

荷重は角付けによる慣性力への対応

最初の45度で角付け(エッジが入る)が行われると、その瞬間から慣性力が発生します。慣性力は電車のつり革の話で理科の教科書に載っていたと思います。直進している自転車やバイクで思いっきりブレーキをかけると、後輪が持ち上がってひっくり返りそうになるアレです。速度のある物体に、その速度と逆方向の抵抗がかかった時、物体が速度方向に進み続けよう力です。逆に、止まっている物体に速度を与えると、止まり続けようとする力でもあります。遠心力も慣性力のひとつです。余談ですが、何かをやり始める時に感じる辛さ、熱中している時に中断させられる辛さも、自分は心の慣性力と思っています。行く前は億劫なのに、行ってみると楽しいってことないですか?

 

さて、スノーボードのターンの場合は、角付けでエッジによるブレーキがかかった時に、動き続けようと慣性力が発生します。慣性力に対して、エッジアングルを高めてソールで慣性力と反対の力を発生させることが荷重です。こう考えると、荷重は、角付けの結果、バランスをとるために自然と発生する受け身の動作とも言えます。積極的なのは角付けで、その尻ぬぐいの動作が荷重と言ってもいいでしょう。会社にもいますよね。イケイケの社長や上司の後ろで尻ぬぐいしながらバランスをとっている人。そんな感じです。

 

荷重の方向と力の向き

荷重は角付けによる慣性力への対応でした。そのため、荷重の方法を考えるには、慣性力の強さと方向が重要になります。慣性力の強さは、物体の重さ(体重)と加速度に比例します。加速度はこの場合、どれくらい急激にブレーキをかけるかです。もちろんスピードが速ければブレーキも強くできますのでスピードは必須です。方向は、遮った力の向きに働きます。

 

斜滑降で進んでいる時には、二つの力がバランスをとった状態で進んでいます。ひとつはフォールライン方向(下方向)、もうひとつは横方向に進む力です。ターンは、横方向への力を反対方向に変換する動きです。そこで、横方向への力に対してブレーキをかけて0にしていく必要があります。

 

角付けは、この横方向の力をイメージして、これにブレーキをかけるように行います。これは前足で行います。下の右図のように赤矢印で示した力に対して行います。ヒザが赤矢印の方向に向いていますが、そのようにすると横方向の力に対して角付け(ブレーキ)が行いやすいと思います。このようにすると、赤矢印方向に慣性力が働き、その反対方向にエッジを傾けて荷重することができます。その際、テール側に回転力が生まれます。ここで、後足でのエッジングがなければズレながら回転します。ここで、後足のエッジングを行い回転力をとめるとズレのないカービングターンになります。回転力が強ければ後足にかかる力も強くなるので後足の荷重も自然と強くなります。つまり、前足で、赤矢印の方向の力にブレーキをしっかりかけることは、後足のエッジグリップを強めることにもなります。

 

 

横方向の力はターンピークで0になります(実際は0になるのでターンピークになる)。そこからは、横方向への力から慣性力は発生しません。反対方向(トゥ方向)に進むためには、ターンピークから先、下方向への力に対して前足でブレーキをかけていく必要があります。斜面下方向に落下する力は重力によるものです。これにブレーキをかけ続けることで横方向への力が発生し、斜滑降になります。先ほどと同様に、赤矢印の力に前足でブレーキをかけることでテール方向には回転力が発生しますので、後足のエッジングで回転力をとめることでカービングターンになります。

 

上記の荷重のプロセスを行うと体感としては、前足でずっと角付けを続けていっているような感じになるのではないかと思います。自分の場合は、前足で角付けをし続けると勝手に後足も含めて荷重できている感じです。サイドカーブを無視して説明しましたが、サイドカーブは前足から始まる荷重を後足の荷重にうまくつないでくれるような感じと思います。ここは自分も理解しきれていないので研究を続けます。

 

ターンピークからの荷重の注意点

ターンピークからは、下方向の力に対して角付けと荷重をしていくと説明しました。よく、ガガガっとなる人がいると思います。ターンピークから先は必要以上に慣性力を大きくしないようにする必要があります。

 

エッジアングルを大きくすれば慣性力が大きくなります。ターンピークからは斜度に応じてずっと重力の分力(上の赤矢印)が働いています。内倒するとエッジアングルが大きくなり、重力の分力を基にした慣性力は大きくなります。慣性力が大きくなると、さらにエッジアングルを大きくしないとバランスがとれなくなります。そこでエッジアングルを内倒によってさらに大きくしないとならなくなります。重力の分力はなくならないので、エッジアングルが重力の分力と同じ向きになるまで、内倒を繰り返すことになります。さらに、ボードに力が加わるとたわむので回転半径も小さくなります。慣性力である遠心力は回転半径の2乗に反比例するので、回転半径が小さくなれば、指数関数的に遠心力が強くなります。この悪循環から抜け出すのは困難です。最終的に、エッジングがもたなくなり、ガガガとなるわけです。

 

重力の分力と記載しましたが、これは、重力方向に真っすぐ立っている状態が最も小さいです。ターンピークから後半は悪循環にならないように、エッジアングルをあまり大きくせず、できるだけ重力方向に真っすぐ立って、角付けと荷重を行うことが重要です。下の図のようなイメージですが、前足でしっかり角付けと荷重をして、斜滑降をすることを忘れないようにしてください。

まとめ

3つの記事でアプローチ角付け荷重の3つについて解説をしてきました。アプローチは、角付けによる慣性力を生み出すための直線的な加速度を得る役割を担います。角付けと荷重はセットで、アプローチで得られた加速度にブレーキをかけることで、回転を生み出していく役割を担います。ヒールターンで混乱するのは、角付けと荷重の方向であると思います。ターンピークまでは横向きの力を使いますが、この横向きの力を小さくするように角付けをすること、これがヒールターンの成否を決めるポイントであると思います。前の記事で記載しましたが、ターンをターンと思って行うとこの横向きの力に対するアクションができなくなります。特にヒールターンは、ジグザクに進むようなイメージでいると、横向きの力に対する角付けが簡単になります。是非、試してみてください。

 

トゥサイドも考え方は同じです。ただし、トゥサイドは足首の関節が使えるので、カービングのバランスはとりやすいです。一方で、内倒しやすくズラシが難しいです。この点は、パウダーや春雪、コブ等で滑りが難しく感じることにつながります。春にむけてこの点をまた解説していきたいと思います。

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