遠回りしたら見えるものがある

スノーボードやスキー、サーフィンをマニアックに分析したい

超重要!カービングターンのポイント

1.上達のために最初に知るべきことは、身体の使い方ではなく、ボードがどう動くべきかです

 ハウツー動画・雑誌等はたくさんあります。しかし、経験や感覚から身体の使い方を解説するだけで、その身体の使い方が、なぜ必要かという点について十分に説明しているものは殆どありませんでした。もちろん、内倒するからと言ったことは説明されています。しかし、それは単に現象を言い換えたにすぎず、直面する課題を解決するためには不十分です。なぜ内倒がダメなのかといった基本的な部分を理解しなければ、取り組んでいる練習が正解に向かっているのかどうかを判断することができず、時間を無駄に使ってしまう可能性が高くなります。

スノーボードやスキーは重力を使って滑走しています。そのため、ボードがどのように動くと重力を上手く使うことができるのか、これがスタート地点と言えます。その次に、そのボードの動きをつくりだすための身体の使い方があります。

 

2.カービングターン時は、重力がレールによって推進力と遠心力に変わる

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写真1 カービングターンを単純化

これを理解するために、プラレールとビー玉を使ってカービングターンを単純化してみました(写真1)。レールは、板で作った斜面の上に置かれています。まずはこれを使った実験の動画1をご覧ください。右上の直線レールからビー玉を転がすと、ビー玉はカーブレールにそってターンをしながら斜面下方向に転がっていきます。この時、ビー玉はレールにぴったりとくっついており、その軌跡にズレがないことが分かります。動画2ではカーブレールがありません。そうすると、ビー玉は重力によって放物線を描いて落ちてしまいターンにはなりませんでした。重力方向には常にビー玉の重さが分解されてかかっていますが、斜面によって支えられて常に釣り合っているのでちょっと無視します。そうするとビー玉がターンに使えた力は斜面下方向に分解された重力だけです(子どもたちが少し勢いをつけたかもしれませんが)。この重力が直線レールによって斜面横方向への推進力に変わり滑走を開始し、次に、直線レールで加速したビー玉がカーブレールにぶつかることで遠心力が生まれ、レールから離れることなくターンしました。特に、谷回りに注目してください。この推進力が不十分であれば充分な遠心力が得られず、ビー玉は重力によってレールから離れてしまうはずです。 

 

動画1 カービングターンの単純化(動画2は文中のリンクからご覧ください)


スノーボード(スキーも)のカービングターンを単純化した図

 

3.カービングターンに必要不可欠な2つのポイント

2の実験から、カービングターンのポイントが見えてきます。まずは、ストレートレールで生まれた斜面横方向への推進力、次に、その推進力を遠心力に変換しつつターンさせるためのカーブレールです。

3-1 斜面横方向への推進力がなければターンできない

 もし斜面横方向への推進力がなかったらどうなっていたでしょうか。間違いなくビー玉は斜面下に直滑降することでしょう。つまり、斜面横方向への推進力がなければターンをすることはできないということです。このことはターン(特にカービンターン)の質を向上させていくために忘れてはならないことなのですが、意識している方は殆どいないと思います。ショートターンが苦手な方は特に、ここを意識しないと効果的な改善が見込めません。どうしても斜面下方向への意識が強くなり、直線的なイメージになりがちです。しかし、ショートターンであっても、必ず斜面横方向に進む瞬間がなければなりません。斜面横方向への推進力を得るためには、ビデオの直線レールと同様のエッジングが必要であり、エッジングの強さや長さをコントロールして、ターン弧の大きさに応じた長さの斜滑降(エッジング)を行う必要があります。十分な推進力がなければ、その後、十分な遠心力を得ることができなくなります。そうすると、斜面下方向に分解された重力によってボードが落下しはじめ、谷回りでエッジにかかる力が小さくなるためカービングターンにならなくなります。ちなみに、内倒は、この推進力への意識が足りず、自分の身体(特に頭)を倒してなんとか曲がろうとしてる状態です。

3-2 推進力を遠心力に変換しつつターンさせるためのカーブレール

得られた推進力でターンをするにはカーブレールが必要でした。スノーボード(スキーも)にはサイドカーブがついています。板が傾くことで、このサイドカーブが雪に接することでカーブレールとなります。カーブレールと違うのはスノーボードにはフレックスがあり、力をかけるとたわむことです。ボードがたわむとサイドカーブの弧が小さくなることから、カービングターンの弧の大きさをコントロールすることが可能になります。可変カーブレールといった感じです。ボードがビー玉のように半円のようなカービングターンをするためには、ボードが傾いてサイドカーブが雪面に接していること、ターン中に、傾いたボードのたわみが一定である(急激な変化がない)必要があります。

4.まとめ

スノーボード(スキー)で、カービングターンをするためには、斜面横方向への十分な推進力が必要であり、その推進力をターンに変換するためのカーブレールをボードのサイドカーブでつくる必要がありました。ここで、再度強調したいのは横方向への十分な推進力得ることです。昨今のスノーボードでは斜面に張り付くような「つ」の字のターンが流行っています。これは斜面下方向に進んで加速する動きが少なくなるため、斜面横方向への推進力を失いやすいターンです。中急斜面で怖くなると結果的に「つ」の字に滑走し十分な減速をしたくなることがあります。まずは、横方向への十分な推進力がないとターンできないということをもう一度意識して頂ければと思います。カーブレールの役割をどのようにつくるかについては、また説明していきます。