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ヒールサイドのその後:結局、基本に戻って完成(Day44)

雪質が悪くなった時こそミスがわかる

気づけば早くも2月。だんだん、寒暖差が激しくなり、標高の低いオーンズの雪質はガリガリだったり、じゃりじゃりだったり、ベトベトだったり、サラサラだったりと変化が激しくなってきました。今年はかなりヒールエッジがしっかり使えるようになり、もう大丈夫!と思っていたら、ガリガリ+じゃりじゃりの日に不味い点ができてきました。

 

「ヒールサイドの山回りで、どうもヒールエッジがガツガツなる」

 

おそらく、経験のある人も多いと思います。トゥサイドでは全然ならないのに、なぜかヒールサイドでなるあれです。とても気持ち悪いあれです。

 

雪質が良いときと悪い日の違い、ヒールサイドとトゥサイドの違い

雪質が悪くなって、雪が緩んでいたり、ガリガリアイスバーンと、ハイシーズンの良い雪では何が違うのか。少し考えていました。エッジを支えてくれる力が違う。ハイシーズンでは板の反発が得られやすいですが、雪が緩んでくると得にくくなる。ガリガリアイスバーンだと反発を得る前にエッジがズレてしまいやすい。

 

ただ、同じコンディションでもトゥサイドはガツガツしません。ガリガリでも雪が緩んでいても、多少の滑り難さを感じつつも、ハイシーズンとあまり滑りの感じは変わりません。ヒールサイドとの違いは何か。感覚的な表現ですがコンディションが悪くなると、トゥは雪を切っていく感じでヒールは雪にあたっていく感じになります。これは最初、後足重心ができていないからだと思っていましたが、実際はエッジの切り替えからターン2/3までの上半身と下半身の関係性が問題でした。

 

下のビデオは、ヒールサイドのガツガツを単純化したものです。最初は成功例、次にガツガツの例があります。成功例は、カーブレールがつながっていて、ガツガツの例はカーブレールが途中できれて、直線レールが横たわっています。このブログのスタート地点である超重要!カービングターンのポイント で詳細は解説していますが、円の接線方向に進み続ける力がなければカービングターンはできません。この失敗例は、ターンの半分から先で、接線方向に進む力(ターンのピークではフォールライン方向)を加えることを忘れて、ターンの内側に身体全体に回そうとしたことをイメージしています。忘れてと表現しましたが、ターンのピークからは重力が強くなるため、遠心力とあいまって、斜面上方向に非常に強い力が得られます。接線方向に進む力が少なくてもターンでき、かつ、大きな力を受けて安定しやすい&気持ち良くなりやすいため、ターンの内側に内側にターンを引っ張ってしまい接線方向への荷重を忘れてしまいやすくなります。ストレートレールになるところは、接線方向への力を忘れて、身体全体でボードをターン内側に回してしまったことを表しています。

 

回してしまうとどうなるか。レールにハマって円運動していたビー玉がストレートレールにあたってレールが下にズレ落ちました。つまり、自分の体重と斜面によってつくられる落下の勢いを急激にボードで受けてしまうことになります。円運動をしていれば緩和されてスピードに変えられていた勢いが、横になったボードに一気に襲い掛かるイメージです。緩斜面なら耐えれますが、中斜面から急斜面では耐えるのが大変になります。たとえ筋力で耐えれてもボードのしなりは耐えられなくなり、ガツガツなってしまうわけです。


Heel side turn. Success failure

 

さて、どうすればいいのか。

結構悩んでしまいましたが、実は昨年の春に同じことで悩んでいたようで荷重の位置を前足の小指の根本あたりにしたことで、ヒールサイドも切っていくイメージで滑れたそうです。記録があってよかったとしみじみ思いましたが、一方で大事なことだからしっかり覚えておけよっと自分で突っ込んでしまいました。

fq12345.hatenablog.com

 

確かに、これを行うといい感じになるのですが、じゃあ、せっかくヒールサイドでキレるターンになってきた動きとはどう整合性をとればいいのかという疑問が生まれました。自分が目指すのは、ある特定の条件のための滑り方ではなく、どんなコンディションでも使えるオールラウンドな滑り方です。なので、春はこう、パウダーはこうというのはありえない。そのため、この10日間くらい考えこんでいました。

 

まずは、この小指の付け根で踏むとはどういうことなのかを理解しようとしました。小指の付け根で踏み込むと、ヒールサイドのノーズのシャベルの付け根あたりのエッジが雪面に食い込みやすくなります。そしてそこからターンがスタートするのですが、ハイシーズンに切れる動きは、エッジ全体を一気に切り替える動きでした。この動きの違いを考えた時に分かったのは上半身のことです。

 

後者の動きは上半身がボードのノーズとテールの線に対して平行にヒールサイド側に移動する感じなのですが、前者はノーズのヒール側のエッジを沈めるために上半身で押し込んでいくような感じがありました。トゥサイドではノーズのトゥ側のエッジを沈めるような感じがあり、これと非常に似た感じがするとわかりました。

 

つまり、カービングできる動きというのはノーズ側のエッジを雪面に潜らせていく動きが上半身でつくれるといいのではないかということです。

 

上半身と下半身の役割分担

試行錯誤しました。結論から先にいいます。上半身は接線方向に進む役割で、ノーズ側のエッジを雪面に潜らせるように押す(押さえる)動きを行います。下半身はターンをつくる役割で、サイドカーブでボードがターンするようにするようにボードを傾けます。

 

要は、上半身は直線、下半身でターンということです。

 

ちょっと物理的な話になりますが等速円運動という動きがあります。

円の内側に向く向心力(遠心力の反力)という力があります。これがエッジグリップやボードをたわませる力です。この公式は、F=mv2/r (mは重さ、vは接線方向への速度、rは円の半径です。接線方向への速度が速くなればなるほど、半径が小さくなればなるほど力が増すということです。逆に、接線方向への速度が遅くなればなるほど、向心力が小さくなり、ボードがたわまなくなるということです。等速円運動については、向心力 ■わかりやすい高校物理の部屋■ で詳しく説明してありますので、興味のある方はチェックしてみてください(それなりに難しいです)。カービングターンは一呼吸待つといい等と言われますが、それはこの接線方向への速度を保つためです。

 

この式をスノーボードと身体を使って表現したのがカービングターンの基本的な仕組みです。上半身は接線方向の速度vを担当し、下半身はrを担当するイメージです。自分の身体ですので、ターン方向に一緒に向けたくなりますが、別々の役割があるということを理解して、それぞれの役割を果たさせないといけません

 

具体的には?

本当はビデオをつくりたいのですが撮影してくれる人が時間がないので(笑)、まずは言葉で説明します。この姿勢は、やってみることが一番早いと思いますので、確認方法をお伝えします。平地で両足のビンディングをつけて、前の手を誰かにひっぱってもらって、まっすぐ進む力をもらってください。そのうえで、下半身に集中してエッジをうっすら立てるようにしてください。そうするとボードはターンを始めますが、前に引っ張られているので、上半身は真っすぐ進もうとします。この時にバランスのとれる姿勢がターン中の重要な姿勢です。あまりエッジを立てすぎると意味がないのでほどほどにお願いします。少し後足で踏めるといい感じです。

 

ヒールサイドは、前足のビンディング方向に下半身を倒してエッジをたてて、上半身を前足のビンディング方向に倒すようにしてバランスをとるはずです。

トゥサイドも同じで前足のビンディング方向に下半身を倒すのですが、この時にカカトをあげるようにすると内倒しないでわかりやすいでしょう。上半身は、ノーズ方向にほんの少し胸を前に向ける感じになると思います。胸を前に向けすぎるとエッジが立ちやすいのですが、今度は前足でエッジを踏めなくなりますので、前足で踏み込める程度に胸を前に向けてください。

 

ちょっと、ラフに記載しましたが、柔らかいコンディションでも硬くても、ガツガツせず、非常に楽にターンできるようになるはずです。またショートターンやミドルターン等が簡単になります、ショートターンの勘違いの多くは、ボードを落下させるように直線的に進ませることです。ショートターンでも同じです。ここは急がばまわれで、簡単にクイックにターンができるようになります。

 

結局、基本である超重要!カービングターンのポイント に戻ってきてしまいました。