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エッジの切り替えのまとめ

モチベーション

2019~2020シーズンの試行錯誤を通して、トゥサイドターンとヒールサイドターンについて下記のようにまとめてきました。それぞれの記事の中で、切り替えについては記載しました。しかし、安定したターンのために非常に重要な動作にもかかわらず、多くのスノーボード記事で十分に説明されていない部分ですので、もう一度まとめてみようと思います。ここを間違うとボードをたわませるのが困難になり不整地や中急斜面での安定したターンができなくなります

 

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エッジの切り替えに必要な動作は軸の入れ替えですが、安定したターンに必要な動作は荷重です

エッジを切り替える。つまり、トゥサイド(ヒールサイド)方向に傾いていたボードを反対のヒールサイド(トゥサイド)方向に傾ける動作です。単純に考えれば下の図のように、ボードとつながっている身体を反対側に傾ければボードも反対側に倒れるはずです。このイメージを持っている方は非常に多いのではないかと思います。緩斜面で棒立ちターンの練習を奨められることがあると思いますが、棒立ちターンはまさにこのイメージでのターンです。ただ棒立ちターンをキレイに整地された緩斜面ではできるけれど、斜度があったりバーンが荒れてくるとできないという方は多くないでしょうか?

これについてはがっかりする必要はありません。安定したターンに必要な動作が足りないので仕方がないです。足りないのはボードをたわませるための動作(荷重)です。キレイな緩斜面ではカービングできるけどーーーという方の多くは十分な荷重ができていないと思ってよいでしょう。

 

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エッジの切り替えの単純なイメージ


ボードをたわませるための動作=荷重とその効果

ノーズプレスやテールプレスをイメージしてもらえればわかりますが、ノーズやテールに力がかかるとボードがたわみます。両足でボードのノーズとテール方向に力をかけると雪面からの抵抗が生まれます。それによってボードがたわみ、キャンバーボードであれば、アーチ形をしていたボードが船底型になりますこれはターンをするためのカーブレールになります。たわみが大きくなればカーブが急なレールになり、小さければ大きくカーブするレールになります。レールの大きさはターン弧です。このコントロールができるということは、すなわちスピードコントロールができるということです。また、たわんだボードには元に戻ろうとする力があります。この元に戻ろうとする力は雪面へのグリップ力になります(リリースするとターン後半の加速にも使えます)。たわみをしっかりつくれれば、斜度があがってもバーンが荒れても適切なグリップ力が得られるということですので安定した滑走につながります

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両足でノーズとテール側に力をかけることでボードがたわむ。ターン中は遠心力の助けもあり、より大きなたわみを生むことができる

重心の高さの変化によって荷重ができる

荷重のための動作は、ジャンプして着地することに似ています。ジャンプというと地面から足が離れて空中に浮くイメージがあると思いますが、同じ動作を足を地面から離さずに行うこともできます。空中に浮くジャンプの後は、上体が高いところから落下する際に発生する力が両足を通して地面に伝わります。地面から足を離さないジャンプでも足を伸ばすことで上体が高い位置に移動します。そして、その上体を屈伸をつかって低い位置に落とせば落下する力が得られ地面に力を伝えることができます。純化すれば自由落下ですのでその力は重力×体重×高さで決まります。重力と体重は変えられませんので高さが大事ということになります。(もう一つ当たり前のことですが、伸ばした脚は曲げれますが、曲がりきった脚はそれ以上曲げれない)

 

スノーボードを始めた時に、切り替えは立ち上がって抜重して沈み込んで荷重すると言われた経験をお持ちの方は多いと思います。この表現は悪くはないですが良くはない、必要なことが伝わり難いと思います。特に抜重というのは誤解のタネのように思います。エッジにかかっている力を抜かないとボードが動かないだろ?というのは間違いないのですが、安定したターンに重要なのは荷重です。そのため抜重と荷重を別のものとせず、立ち上がって抜重は荷重のための高さを得る動きと考えた方が効率的な動作につながると思います。

 

荷重が不十分になる原因の多くは、必要な高さが事前に得られていないことではないかと思います。実際、立ち上がらなくても抜重できます。バーンが荒れてきたり、斜度が急だったりすると立ち上がること自体が不安定さを生むので立ち上がる動作を省略してしまうことが多いです。本来、バーンが荒れたり斜度が急にであったりするほどグリップ力を得る必要があります。そのためには高いところから荷重してより大きなたわみの力を得る必要があるはずです。急斜面や荒れた斜面で立ち上がらないということ自体が、不安定な滑りへの悪循環の始まりではないかと思います。

 

沈みこんで荷重するというのも表現として同様の問題を含んでいます。低い姿勢=十分な荷重ではありません。重心が高いところから低いところに移動する変化量が荷重の力(変化のスピードももちろん関係しますが、まずは高さを意識しましょう)です。沈み込んで荷重というと、沈み込んだ状態を続けてしまう誤解が生まれやすいと思います。よくボードの上で動き続けると言われますが、これは高さの変化がなければたわみの力は発生しないということを表しています。

 

切り替え動作の流れは簡単ですが立ち上がる方向に注意してください

切り替え動作の流れ

上で説明した通り、安定したターンに必要なのはたわみを生み出すための荷重でした。荷重は、重心の高さ変化により生み出されるため、ターンの前に十分な高さを得る必要があることもわかりました。切り替えはひとつのターンのスタートです。安定したターンのためには、切り替え動作として単にボードのエッジを切り替えるだけでは不十分で、荷重動作もスタートさせる必要があります。切り替え時には、まずは重心を高くする動作を行う必要があります。それは地面から離れないジャンプのようなイメージです。荷重は一連の流れです。衝撃を吸収しない着地(例えば、高いところから落下する力を地面にぐりぐりとねじ込むように、ジャンプして地面の上にある板を割るように)をするように行います。膝を曲げないということではありません。膝を使って体重が地面にズンと伝わるような感じです。最初は大げさにやってみましょう。一度コツをつかむとジャンプを意識する必要もなくなると思います。体重計の上でやってみるとわかりやすいですが、壊さないように。

 

重心を高くする動作は移動方向に注意してください。

移動する方向は、重力方向です斜面に平行ではありません。荷重には重力を使いますので、下の図のように重力を最大限に使える方向で移動する必要がありますエッジの切り替えばかりを考えるとこれが斜面に垂直方向になりがちです。リーンアウトしてーーなんて言われるとますます垂直方向まで移動させようとします。垂直方向まで移動すると重力は分解されてしまって、ボードをたわませるために使える力は減少します。

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荷重で重力をしっかり使うために、重力方向に立ち上がる(赤枠の方向)

それじゃ、エッジが切り替わらないじゃないか!!とお叱りを受けそうですが、重力方向に立ち上がって、その高さから着地する際にエッジを切り替えます。

例えば、トゥエッジからヒールエッジへの切り替えであれば重力方向に立ち上がった後、カカトで斜面を踏み込むようにします。そのときに頭や上半身を斜面に垂直方向に倒す必要はありません。カカトで踏めば身体全体が必要な分だけ自動的に傾きます。

 

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トゥサイドからヒールサイドへ。重力方向に立ち上がってからカカトで踏むように着地する

ヒールサイドからトゥサイドへ切り替えは、足首が使えるので特に斜面に垂直方向に傾いてしまいやすいです。プロライダーのライディングビデオでも積極的に上体を巻き込むように倒していくものが多いですが、まずは真似しない方がいいです。実際そのようなライディングをみると、立ち上がって荷重の力を得るターンではなく一度沈み込んでから身体を伸ばして荷重を得るターンをしていることが多いです。トゥサイドはこの滑り方がやりやすいのですが、立ち上がっての荷重との違いが曖昧な状態で真似すると動作が混ざって混乱します。トゥサイドは立ち上がりながら荷重、ヒールサイドは沈みこみながら荷重という具合です。こうなると特に急斜面のショートターンでボードを回しこめなくて暴走しやすくなります。まずは、沈みこみながらの荷重の感覚をしっかり身に着けて自分のスタイルを追求することをおススメします。

 

ヒールサイドからトゥサイドへの切り替えでも、早く曲がりたいので身体を倒してしまいがちです。しかし、まずは重力方向に真っすぐ立ち上がって荷重の力を得ます。そして、つま先を踏み込むように着地をして荷重を行います。上体は踏み込みに併せて倒れるのを邪魔しないようにしましょう。一見、ターンが遅れるんじゃないか、曲がれないんじゃないかと思ってしまいますが急がばまわれです。荷重に使える力がしっかりあれば、非常にクイックかつ力強くターンできます。

 

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ヒールサイドからトゥサイドへ。つま先で踏み込むように着地する。上体はそれに従って自然と傾くようにする。怖いと上体が傾かないようにしてしまいがちです。思い切って傾く動きについていってください

 

以上です。知らないと動きが曖昧になり、安定したターンへに道が開ません。是非騙されたと思ってでも試してもらえればと思います。