遠回りしたら見えるものがある

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ズレないヒールサイドターンに向けた整理

2020/04/11 この記事については、解決方法の記事を追加しましたので、併せてご覧ください。

fq12345.hatenablog.com

 

 「ヒールサイドターンでズレる」はスノーボードの大きな課題

永遠の課題のように感じています。今シーズン、様々なことを試してみました。まだ若干違和感が残っていますが、かなり、良くなってきましたので、これまで考えてきたこと、これからのポイントを整理しようと思います。僕は、キレのあるターンではなく、どんな斜面でも、安全、安心、スムーズなターンであることを重視していますので、キレを生み出すところは省いていきます。また、僕はボードのビンディングに自然な横向きの基本姿勢を前提としています。

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シャバシャバで荒れたバーンでのカービング結果

ヒールサイドターンの基本動作と順番、ズレの原因

ターンの基本動作と順番は、以下の3つ(番号は順番)です。

(1)角付け(エッジを雪に噛ませる:ズレないようにグリップさせるため)

(2)荷重(ボードをたわませる:曲がる量をコントロールするため)

(3)ローテーション(必要に応じて、ボードを積極的に曲げて行くため)

ヒールサイドターンでは斜面下方向を見たくなることから、上半身のローテーションが、ターンの最初に起こりやすいです。これが、ズレの大きな原因です。特に、角付けが十分に行われていない状態で、上半身のひねりが発生すると、それが腰とヒザに伝わりボードがズレます。これは、初級者、中級者だけの問題ではなく、JSBA1級くらいの上級者で、緩~中斜面ではカービングができるけれど、斜度があがると難しく感じるという方なんかも、この問題によるものと思います。

 

ヒールサイドターンの流れとポイント

 ヒールサイドターンは通常、トゥサイドターンの終盤から始まり、次のトゥサイトターンにつながっていきます。そのため、ヒールサイドターンだけ分けて考えることはできません。トゥサイドターンが上手くいかないと、ヒールサイドターンも上手くいきません。下の図のように、ヒールサイドターンは、トゥサイドターンの後半から考える必要があります(練習する際は、直滑降からトゥサイドターンの山回りをするといいと思います)。ここでは、トゥサイドの後半も含めて、整理します。

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ヒールサイドターンの流れ(トゥサイドターンの後半も含める)

 

1.ヒールサイドターンの準備(トゥサイドターンの後半)

トゥサイトもヒールサイドも「ターンの最初は前足荷重、後半は後足荷重」と言われます。しかし、冒頭で述べたように、どんな斜面でも、安全、安心、スムーズなターンという点からは、トゥサイドでは、ターン中は常に前足荷重を意識した方がいいと思っています。誤解しないで欲しいのは、後足荷重になるなということではありません。トゥサイドターンの大きな問題点は、前足への荷重が不足し、すぐに後足荷重になってしまうことです。そのため、前足荷重を続けても、自然に後足には荷重されます安心して、前足荷重を続けてください。もし、テールがズレる時は、少し後足荷重を意識すると良いと思います。前足荷重が十分にできると、急斜面でも、グリップの効いた、スピードが一定なターンができるようになります。(トゥサイドターンの前足荷重に関連する記事は、スノーボード:トゥサイドターンで「踏む」ためにはカカトでボードを立てる。 - Go with the flow

 

2.エッジの切り替えと角付け

まずは、確認です。1.のようにトゥサイドを前足荷重で滑ってくると、スピードが一定でコントロールできていると思います。もし、ここで加速を感じて、余裕がないようでしたら、トゥサイドターンの後半の後足荷重が強すぎです。もっと前足荷重で滑りましょう。

2-1.切り替えの範囲

角付けのスタート地点は、下図の赤線です。しかし、角付けも含めたエッジの切り替えは、その前後を含めた水色の範囲と考えることができます。切り替えでは、重心を移動させるために、あえて不安定な状態をつくることになります。そのため、斜度やバーンの不安定さ、ターンの大きさによって、角付けを含めた切り替え動作の速さは変わります。例えば、緩、中斜面かつ程よい硬さのグルーミングバーンで、自由落下を楽しみながら、大きくターンをするなら、水色の範囲を大きくして、切り替えと角付けをゆっくり行ってもいいと思います(荷重が遅れるので減速は少ない)。急斜面のグルーミングバーンで、つの字になるような、斜面にへばりつくようなターンをしたいなら、範囲を小さく一瞬で切り替えと角付けを済ませて、荷重をすぐに始めたいところです。春のシャバ雪でバーンが荒れてきているなら、ある程度早めに角付けを終えて、早めに荷重を始めて、姿勢を安定させたいところです。

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切り替えの場所

 2-2.リーンアウト

角付けは、ボードが斜面とフラットになったところからスタートします。そのため、トゥサイドターンで山側に傾いた身体を起こす必要があります。前述の前足荷重ができていないと、ボードのターンが回りきれず、また、後足荷重で加速するので、ここで重力と速度による力が大きくかかり、歯を食いしばって上体を起こすような感じになります。しかし、リーンアウトは本来、遠心力を使って行われるため力はいりません。もし、身体を起こすのに過剰な力が必要と感じたら、トゥサイドの前足荷重が不十分ですので、前足荷重をもう一度確認しましょう。

 

ヒールサイドターンのズレの原因は、ここにも潜んでいます。トゥサイドの後半で過剰に後足重心になっているということは、だいたい上体が前を向いています。トゥエッジがかかっている時は良いのですが、身体が起きてボードが斜面にフラットになった時、上体のねじれは、腰とヒザを通してボードを回転させます。トゥサイドターンの後半に後足荷重で上体が前を向いているときは、だいたいスピードと加速度が大きくなっています。身体がスピードに負けて重心がテール側に移動させられる、つまり後傾になります。そのような状態から重心をボードのセンターに戻し、上体を基本姿勢に戻すのは困難です。ヒールサイドターンのズレをなくすためには、リーンアウトの前に、前足のスタンス角度程度に上体を前に向けて、視線を前に向ける基本姿勢になっていることが重要です。

 

リーンアウトは、立ち上がり抜重の場合、谷側に上体を起こそうとせず、トゥエッジを踏んで、重力方向に上半身を立てていくようにしてみてください。遠心力で勝手にフラットになります。重要なので、もう一度言いますが、ここで、身体が基本姿勢以上に前を向くとズレます。勝負は、戦う前にある程度ついているのです。

 

2-3.角付け

トゥサイドの後半が安定していれば、ヒールサイドの角付けはかなり簡単になるはずです。まずは、上図の赤線のラインで、安定した基本姿勢になっているようにしましょう。

 

角付けのポイントは、その後、荷重ができる状態で、効率良くエッジを立てるです。荷重ができるというのは、ヒザの屈伸で両足のカカトに均等に力を加えることができる状態です。これは、上半身と下半身にねじれのない状態(特に、両足に対して腰が過剰に前を向いていない状態:つまり横向きの基本姿勢)です。ボードをつけずに、両足のカカトに均等に力をかけるように、屈伸してみてください。その際に、両足を固定して、腰の向きを次第に前にしていくと、どのあたりまで前を向くと、両足荷重が難しくなるかが分かると思います。ボードのブーツとビンディングをつけた時のこの状態のポイントは、ビンディングの角度です。ビンディングの角度以上に前を向かないということを改めて気をつける必要があります

 

その上で、効率良くエッジを立てる動きは、ハイバックの中心線(ハイバックをローテーションさせていなければ、ビンディングの中心線)をふくらはぎで押し倒すことです。前足も後足も同じです。よく後足のヒザをボードの中心方向にねじってというようなことが言われますが、意図して行う必要はないと思います。荷重時に、ボードがたわんだら、結果的に両膝がボードの中心方向に傾くと思います。

 

ハイバックの中心線をふくらはぎで押し倒すためには、重心(腰)がボードの中心から、ヒールサイド方向に移動する必要があります。その際、重心は前足からヒールエッジ方向に伸ばした線と、後足から同様に伸ばした線の交点をめざす感じで、斜め後ろ方向に移動させる(下記の図)と、両足均等に、ハイバックの中心線をふくらはぎで押し倒すことができると思います。この時に、特に前ヒザを伸ばすようにするとエッジが立ちやすくなります。ただ、上体が前を向くと、腰も前を向きやすく、重心が単にテール方向に移動しやすいため、下記の図の斜め方向への重心移動が難しくなります。重心移動が不足すると、角付けが不足するのでその後いくら踏ん張ってもズレます。無駄です。ここが一番難しいところと思っています。

 

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重心の移動方向(腰をヒールサイドの中心線の延長線の交点方向を目指して移動させる)

トーションに言及している人は多いと思いますが、上体の不必要なねじれを生み出し兼ねないので、最初あまり考えない方がいいのではないかと思います。上記の重心移動をする際に、前足のハイバックを倒すことだけに集中すればトーションが使えるようになると思います。自分は、これをすると後足の角付けを忘れてしまって、ズレをつくってしまうことがあります。急斜面で、ズレを含めてスピードコントロールする際は、前足のハイバックだけに集中してトーションを使うのはとても効果的と思います。

 

最初は、前足のハイバックを倒すために、前ヒザを伸ばしつつ、斜め後ろに腰を移動させていくと、後傾にならなくて良いと思います。もちろんズレがでるとは思いますが、まずは、リーンアウトの流れで、腰を斜め後ろに持っていく感じをつかむことが先決と思います。

 

2-4.荷重

角付けができたら、両足でボードに荷重します。荷重は、リーンアウトで立ち上がりつつ起こした上体をヒールエッジの上に落とし込むよう動きです。ジャンプして着地するのと似ています。ただし、ジャンプの着地と違うのは、ヒザを必要以上に曲げないということです。軽いジャンプの着地で、ヒザを曲げないで衝撃を敢えて受け止めるイメージです。ここで生み出された衝撃と遠心力で、ボードをたわませることができます。

 

この時、自分からヒザを曲げると、ボードをたわませるための力をヒザで吸収してしまうことになります。ヒザは、遠心力によって曲げざるを得ない状態になりますので、自然に曲がる分だけにしておきます。

 

最初は、緩斜面で角付けと荷重をしっかり区別して、同時に行わないようにすると良いと思います。同時に行うと角付けだけで荷重を忘れてしまうかもしれません。

 

角付けと荷重で、モモが斜面に対して平行になるまで、重心を斜め後方に移動つつ踏み込めるとエッジのグリップと荷重を感じれるのではないかと思います。

 

荷重は、ターンの3分の2くらいまでで十分です。その後は、トゥサイドターンへの準備として基本姿勢に戻り、リーンアウトを始めます。

 

ボードを走らせるために後足荷重と言われますが、後足荷重をしすぎると上半身をねじることになり、また、そのねじりがボードを必要以上にターンさせてしまうため、ズレやすくなります。後足荷重は意識せず、角付けの際に説明した重心の移動方向をキープすれば十分です。ターンの3分の2までは前足荷重が必要と思います。